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第50回宝塚記念 展望

ドリームジャーニー調教


今年のG1戦線もこのグランプリが上半期の最終戦。すでに新馬戦は始まっており、宝塚記念が終わればいよいよ本格的に夏競馬が始まる。
梅雨の天候が安定しない時期、また夏の暑さもすでに始まっていることもあり、有力馬勢揃いとはなかなかいかないグランプリだが、今年は昨年のJC馬、春の天皇賞馬、そして昨年のダービー馬などそれなりの面子が集まった。ウオッカの回避は(個人的には賛成だが)盛り上がりを欠く要因とはなったが。

そのウオッカの回避で断然の人気が予想されるのがディープスカイ。確かに昨年の変則2冠馬だし、レースでの安定感は群を抜いている。だが、良い勝負をしているとはいえ、昨年の秋の天皇賞から勝ち切れていないのもまた事実。人気の差ほど抜きん出た存在ではないのではないか。

これまでG1に限らず本命に期待したことはないドリームジャーニーだが、今回こそ、この舞台こそが最適。
阪神は得意のコースだし、実際斤量差があったとはいえ大阪杯ではディープスカイを破った。距離不向きの天皇賞で3着激走が好調の証。
天気だけが心配だったが、雨もそれほど強くは降らない予報。阪神の内回り2200m。ピッチ走法での強力な末脚が最も生きる舞台だ。

ディープスカイはもちろん対抗より下には落とせないが、もう1頭厚く期待したいのがサクラメガワンダー。
G1ではあと一歩届かずの印象だが、昨年のこのグランプリ4着から掲示板を外したのがレコード決着となった秋の天皇賞(それもウオッカから0.6差)だけという安定感。昨年4着だった金鯱賞を快勝しての参戦は、昨年以上の状態のはず。福永祐一も虎視眈々だろう。

日経賞勝ち、天皇賞2着とここにきて期待通りの走りが出来るようになってきたアルナスライン。昨年3着のインティライミ。前で粘れるアドマイヤフジ。人気薄ゆえインコースで死んだ振り、最後の出し抜けが怖いスマートギアまで。





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Gift from Tachyon

フジキセキ、タヤスツヨシ、ジェニュインといった初年度産駒の衝撃から、サンデーサイレンスの血は毎年のように、当たり前のように、日本競馬界を席巻していた。
初年度でタヤスツヨシが早くもダービーを制した後も、スペシャルウィーク、アドマイヤベガがダービー馬となり、アグネスフライトは河内洋を悲願のダービージョッキーに導いた。
それでも僕たちはフジキセキの衝撃が忘れられず、彼こそがサンデーサイレンスの最高傑作だと信じ切っていた。

アグネスフライトがダービーを制した頃、牧場で早くも評判になっていたのが彼の全弟、のちのアグネスタキオンだった。
兄よりも雄大な馬格からは大物の雰囲気が早くも漂い、兄以上の逸材ではないかと言われていたそうだ。

そしてその年末、2000年12月5日の阪神芝2000mの新馬戦で彼はデビュー。ここにはその素質を買われている馬の多くが集うので、ボーンキングやリブロードキャストに続く、アグネスタキオンは3番人気だったものの、レースではライバルを圧倒した。
道中中団よりも少し後ろから3コーナーで前へと進出、4コーナーでは早くも先頭に並びかけ、最後の直線では後続を3馬身半突き放した。残した上がり3ハロンは33秒8。
鞍上のダービージョッキー河内洋が、この時点でダービー馬である兄よりも上だと確信したほどの内容だった。

陣営は、当然のように暮れのラジオたんぱ杯3歳ステークスへと駒を進める。
のちに、伝説となるG3だ。

アグネスタキオンは2番人気。1番人気は新馬、エリカ賞と連勝してきたクロフネ。3番人気に好メンバーの新馬戦を勝ち、札幌3歳ステークスを制してきたジャングルポケット。

アグネスタキオンは新馬を勝ったばかりだった。でも、そんなことは関係なかった。
3、4番手を進むライバル2頭を見ながら、河内アグネスタキオンは進む。そして、4コーナー手前から強気のスパートを仕掛け、そのまま最速上がり34秒1で押し切ってしまう。
アグネスタキオンについていこうとしたクロフネは離されるばかりだし、仕掛けを送らせたジャングルポケットでさえ追いすがれなかった。何しろ、先に仕掛けたタキオンの方が上がりの脚が速いのだから、どうしようもない。

タキオン1


戦前3つ巴だと言われていたレースを、圧勝で飾る。しかも、(この時点ではもちろん分かっていなかったが)相手はのちにNHKマイルカップとジャパンカップダートを勝つクロフネと、ダービーとジャパンカップを勝つジャングルポケットだ。

僕たちは唸った。

その後休養を挟み当たり前のように弥生賞を勝って、無敗で皐月賞を制したその姿を見て、僕たちはフジキセキの衝撃を思い出さずにはいられなかった。

タキオン2


サンデーサイレンスは毎年のように強い子を送り出しながら、未だ3冠を制した馬はいなかった。
フジキセキは無敗で弥生賞を制したものの、無念のリタイヤで皐月賞にすら駒を進められなかった。
でも、タキオンなら。彼こそが、フジキセキに代わり、このまま無敗で3冠を制する馬なのではないか。
SS産駒の強さに慣れ始めていた僕たちにとって、かのフジキセキと比肩し得る初めての存在。アグネスタキオンはそれほどの希望を与えてくれる馬だったのだ。

ただ、彼もまた、ダービーの舞台には立てなかった。その足跡は、悲劇的要素も含めてフジキセキと酷似していた。
左前浅屈腱炎での、早すぎる引退。

彼がターフを去ったその春、NHKマイルカップをクロフネが勝った。ダービーはジャングルポケットが勝った。
ダービーをジャングルポケットが制した際、テレビ解説者は「ジャングルポケットの2馬身先に、アグネスタキオンが走っている姿が見えた」と言った。
秋になり、弥生賞で4着に下したマンハッタンカフェが菊花賞と有馬記念を勝ち、クロフネがジャパンカップダートを圧勝、ジャパンカップはジャングルポケットが制した。
強い世代だった。そして、これら同期のG1馬を相手にしなかったアグネスタキオンこそが、その世代の頂点にいるべきだった。
ライバル馬がG1を勝つ度に、僕の中ではただアグネスタキオンの強さが浮き彫りにされていくだけだった。


アグネスタキオンは、種牡馬になってからもそのポテンシャルを発揮した。
初年度でNHKマイルカップを勝つロジックを送り出し、まだ父サンデーサイレンスは健在だったが、直仔の後継種牡馬の地位は着々と固められつつあった。
コンスタントに活躍馬を出すのはSS系でもフジキセキとアグネスタキオンくらいだったし、その事実もやはりこの2頭こそがサンデーサイレンス産駒でも上位の能力を秘めていたことを示している。

タキオン3


アグネスタキオンは2年目でダイワスカーレットを出し、ディープスカイでダービー馬の父にもなった。
サンデーサイレンス亡き後の、リーディングサイヤーにも輝いた。
そう、これからだったのだ。
ディープインパクトやハーツクライといった後輩のサンデーサイレンス産駒たちと同じ舞台に立ち、SSの血を日本に、世界に広めていかなければならなかった。

だから、11歳という若さでの訃報には、ただ戸惑うばかりだ。呆然とするしかない。

あの、ラジオたんぱ杯の衝撃が、身体中に蘇る。クロフネとジャングルポケットを楽々と突き放したあのレースが、昨日のことのように生々しく、僕の身体と心を揺さぶる。

ダイワスカーレットの恐ろしいまでの強さが、僕の身体には深く沁み込んでいる。

現役中も、父となってからも、アグネスタキオンは僕たちに素晴らしい贈り物を与え続けてくれた。
自身の走りで、引退後のライバルたちの走りで、そして、子供たちの走りで。

今はただそれに感謝して、冥福を祈って、静かに合掌しよう。




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第59回安田記念 回顧

yasudakinen2009


ときには後続に7馬身をつけて圧勝したり、またハナ差2センチの死闘を制したりする。そうかと思えば負けるときはコロリと負ける。勝っても負けても華やかで派手なところが、おそらくウオッカの魅力なのだろう。
今回の安田記念も最後の直線で前が壁になり、武豊は2度3度と行き場をなくした。前には馬群を突きぬけたディープスカイがいる。
これは、負けた。
と思った瞬間、馬群を割って1頭だけ別次元の脚でディープスカイを捕え、最後は手綱を控えるまでの余裕を持っての勝利。

ウオッカが勝った瞬間、岡部幸雄がシンボリルドルフでダービーを勝ったときの言葉を思い出した。
スパートをかけようと手綱をしごく岡部に反応せず、その後自分でスパートを開始し、きっちりと勝ったというあの2冠目だ。
「しっかり捕まっていろ。」
と言われたと岡部は言う。競馬を教えてもらった、と。

先日のオークスでのブエナビスタもそうだが、ウオッカも競争とは何か、ゴール板はどこか。そんなことを把握している、そういう域に達する名馬なのかも知れない。

これでG1を6勝目は牝馬としては単独トップ。獲得賞金10億円超も牝馬では初。記録づくめの大勝利を、この勝ち方で決めるのだから、やっぱりスターホースなのだ。
それにしても、2歳女王が5歳となったここまで息の長い活躍を続けること、それ自体が驚異的だ。むしろ今が一番充実しているような感じさえ受ける。
陣営は宝塚記念への参戦へも含みを残し、今年いっぱいでの引退撤回まで翻すかのような口調。
ここまでの牝馬だ。それも無理はない。
もちろん牝馬だけに、現役引退後も大切な仕事が待っている。健康で、より多くの子孫にウオッカの血を残さなければならない。ただ、ここまでの馬はそうそう現れるものでもない。血を残す前に、もう1段階上にまで達してもらいたい気持ちも残る。
とにかく、陣営は細心の注意を払って今後のことは慎重に決めてもらいたい。それこそ岡部幸雄が言う、「馬優先主義」で。

ウオッカは不利があり、対するディープスカイは理想通りの競馬運び。これで負けたのだから、今回に限っては完敗を認めざるを得ない。
ただ、久し振りのマイルの距離で、身体も宝塚記念を睨んで幾分太めの作り。それでいて2着に来るのだから、やっぱり強い。
もし、グランプリにウオッカが出てきたら、そこでの雪辱を期したい。

3着には道中最後方のファリダット。
前が流れてくれた展開も味方したことは事実だが、やはりその末脚は目を瞠るものがある。
もう少し器用さが出てくれば(せめてあと2~3馬身前で折り合えれば)、G1クラスでも充分に戦える能力はある。

カンパニーはまたしても悲願のG1制覇ならずの4着。横山典の冷静なペース判断から末脚を伸ばすも、届かず。
能力は確かなのに、G1で突き抜けるには何かが足りないのだろう。もう8歳。頑張っているが、残されたチャンスは少ない。




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第59回安田記念 展望

ゲレイロ


週の後半から降り続く雨も土曜日の午後からは止み、日曜日当日は晴天予報。パンパンの良にまでの回復は見込めないだろうが、少し湿り気を帯びた程度の良で行われるであろう安田記念。
コンゴウリキシオーが逃げてサイトウィナーが2番手か。ローレルゲレイロは大外枠に入ったこともあり、この2頭を見ながらの3~4番手。
おそらくペースはハイでもスローでもないミドルペース。ローレルゲレイロにとってはうってつけのペースになる。
今年の高松宮記念を勝ったとはいえ、生粋のスプリンターではない。マイルにも実績のあるローレルゲレイロは、むしろマイルのゆったりとしたペースの方が最後の直線で2枚腰が生きるのではないか。
マイペースで進んだときの粘り腰はしぶとい。ウオッカが襲いかかってくるだろうが、少し早めに突き放せれば、簡単には譲らない。
本命には、ローレルゲレイロ。

対抗はもちろんウオッカ。
前走ヴィクトリアマイルは強い内容。馬場もそれほど悪くはなりそうにない。好位追走から、ギアチェンジの速さは天下一品だ。

ディープスカイはもちろん強い。
ただ、前走で2000mを使ったことがどう出るか。マイル戦はNHKマイルカップ以来。自然と位置取りは後ろの方になるだろう。
果たして直線の鋭い脚だけで前を捉えきれるかどうか。

悲願のG1に全力のスーパーホーネット。横山典の作戦が怖いカンパニー。内枠人気薄の岩田、スマイルジャック。渋った馬場で持ち味が生きるアブソリュート、トウショウカレッジ。本格化なったならばスズカコーズウェイ。
香港勢からは近走冴えないアルマダよりも、勢いのあるサイトウィナーを押さえる。




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第76回日本ダービー 回顧

ダービー2009



晴れるまではいかないまでも回復に向かう天気予報をあざ笑うように、午後から土砂降りの大雨。結果、記憶にないほどの泥んこ不良馬場で行われたダービー。
ここまでの馬場になると馬自身の力うんぬんよりも、この馬場をこなせるかどうかの方が大きい。さらに、泥を被って後方に待機し、直線にかける切れ者にはかわいそうな馬場ともなった。

そんな馬場状態の中、大きく後方を引き離して逃げたNHKマイルカップ馬は結果的にハイペース。離れた2番手を進むリーチザクラウンが実質的にはこの馬場に適したペースでレースを引っ張ったことになる。
そんなリーチザクラウンを見るように、2~3馬身後方で、インにぴったりと張り付いてレースを進めたのがロジユニヴァースだった。それはまるで暮れのラジオNIKKEI杯のようなレース振り。
直線も早々に下がってきたジョーパプチーノを捌いて先頭に立とうとするリーチザクラウンの、さらに内のスペースをこじ開けるように抜け出し、そのまま力強いストライドで2着に粘るリーチザクラウンに4馬身の差をつけた。
スタートはそろっと出てすぐにはインに切れ込まずに馬を落ち着かせ、ジョーカプチーノが譲らないと見るやすんなりと番手でリーチザクラウンを折り合わせた武豊の騎乗は、現時点の馬の状態を最大限に発揮する見事なレース振りだった。実際、ロジユニヴァース以外には抜かれていないのだから、この馬も皐月賞大敗の汚名を晴らす素晴らしい2着。
ただ、そのリーチを目標にレースを進め、ここしかないという馬1頭分の隙間を縫って出たロジユニヴァース横山典の騎乗は、武豊を上回る冷静さと大胆さだった。ロジユニヴァース自身も、スピード決着よりもタフなスタミナ勝負の方が向いているのだろう。

このダービー1、2着馬を短期間で立ち直らさせた陣営は見事だったし、何よりも、横山典弘がついにダービージョッキーになった。
長年、東の競馬界を引っ張り、ベテランとなってさらに円熟の手綱裁きを見せ、勝てば馬のお陰、負ければ自分を責める男なだけに、ファンも多く、そのファンからの支持も高い。
そんな彼が、ダービージョッキーの称号を手に入れた。
力いっぱいの拍手で、新しいダービー馬とダービージョッキーを讃えたい。

皐月賞上位馬はそろって惨敗だったが、この馬場だけにかわいそうな部分もある。
他路線組も大負けはしていないのだから、この結果が全てではなくまだまだクラシック路線で可能性は残した。

春のクラシック戦線は終わったが、秋に向けてまだまだ予断は許さない。




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